トリガーポイントとは
トリガーポイントとは、筋肉の一部が縮んで硬くなった筋硬結で、押すと痛みがあるポイントです。
他の部位に痛みやシビレなどの症状(トリガーポイント関連痛)を引き起こします。
圧迫されなければ局所痛や関連痛を引き起こさない、潜在性のトリガーポイントと、
圧迫されなくても局所痛や関連痛を引き起す、活動性のトリガーポイントがあります。
筋肉、筋膜、骨膜、靭帯、皮膚などの軟部組織に発生します。
トリガーポイント発生の要因
長時間の筋収縮、
筋肉への物理的な刺激や損傷、
痛みを感じることによる筋肉の緊張、
筋肉の固定、
筋肉の長時間の短縮、
長時間のストレッチ、
などにより発生します。
トリガーポイントの解消法
トリガーポイントは虚血(血流が少ない)状態で、弛緩するためのエネルギー不足となっています。
トリガーポイント部分の血流を回復することで解消されます。
※カルシウムイオンの放出によって筋肉が収縮します。
カルシウムイオンは、カルシウムイオンポンプによって常に回収されています。
カルシウムイオンポンプを動かすエネルギーをつくるには酸素が必要です。
虚血状態ではカルシウムイオンポンプが働かず、カルシウムイオンが回収されないため、筋収縮したままとなります。
酸素は血流によって運ばれます。
つまり、血流が回復し、酸素が送られることで、カルシウムイオンポンプが働き、カルシウムイオンが回収され、筋収縮が解除され、トリガーポイントが解消されます。
一般的な治療法
トリガーポイント治療を行っている治療院により異なります。
阻血性圧迫、持続圧迫/トリガーポイント加圧リリース、ディープ・ストローキング・マッサージ、スプレー&ストレッチ、トリガーポイント注射(医師免許が必要)、ハリ治療、ストレッチ、など。
筋肉トリガーポイントと関連痛
参考資料:
ここでご紹介する、トリガーポイントの情報は『筋骨格系の触診マニュアル第2版』(株式会社ガイアブックス 発行)を参考にしましたが、書籍によって関連痛の部位が多少違います。目安程度にお考えください。
各図で、●がトリガーポイントの位置、
赤く塗ったエリアがトリガーポイント関連痛領域です。
トリガーポイント索引
- 僧帽筋
- 胸鎖乳突筋
- 顎二腹筋
- 頭板状筋
- 頸板状筋
- 頭半棘筋
- 頭最長筋
- 後頭下筋群
- 後頭筋・前頭筋
- 側頭筋
- 咬筋
- 腕橈骨筋
- 円回内筋
- 回外筋
- 大殿筋
- 大腿四頭筋
- 恥骨筋
- 大内転筋
- 長内転筋
- 腸腰筋
- 腹斜筋
僧帽筋
僧帽筋のトリガーポイント関連痛領域
僧帽筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●筋肉の酷使
●日常的に肩をすくめている、
●頭を前に出した体勢、
●重い荷物を手を伸ばした状態で持つ(肩で引き上げる状態)、
●重い荷物を肩に掛ける、
●きついネクタイやシャツの着用、
●ブラジャーの紐がきつい、
●ストレスや緊張で肩に力が入っている、
など。
身体への影響
僧帽筋上部のトリガーポイントは、
首の側屈制限、同側回旋制限、首の対側回旋時の痛み、肩こり、緊張性頭痛、
僧帽筋中部のトリガーポイントは、僧帽筋中部の筋力低下、
僧帽筋下部のトリガーポイントは、僧帽筋下部の筋力低下、
僧僧帽筋すべての部位のトリガーポイントが、付着する脊椎の脊椎関節機能障害、
などを引き起こす傾向があります。
診断との関係
頸部椎間板症候群、顎関節症、頭部神経痛と診断されることがあります。
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胸鎖乳突筋のトリガーポイント関連痛領域
関連痛は身体の反対側にまで及ぶ場合があります。
胸鎖乳突筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●筋肉の酷使
●頭を一方向に長時間向けたままの姿勢、
●慢性的な咳、
●高すぎる枕で寝る、
●きついネクタイやシャツの着用、
●外傷、
など。
身体への影響
胸鎖乳突筋のトリガーポイントは、
首と頭の傾き姿勢、
首の関節可動域制限、
咽頭痛、
自律神経系の症状(上眼瞼下垂、視力障害、涙の過剰分泌、局所血管収縮、発汗過多など)、
固有受容性の症状(浮動性めまい、空間識失調、悪心、運動失調、聴覚障害など)、
第11脳神経(副神経)の脊髄根の絞扼、
などを引き起こす傾向があります。
診断との関係
リンパ節腫脹、副鼻腔炎、片頭痛、胸鎖関節炎、三叉神経痛、疼痛性チック、神経性痙性斜頸と診断されることがあります。
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顎二腹筋のトリガーポイント関連痛領域
上図では描いていませんが、下顎切歯4本も関連痛領域です。
顎二腹筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●筋肉の酷使、
●口を開いたままの体勢、
●口呼吸の習慣、
●頭を前に出した体勢、
●外傷、
など。
身体への影響
下顎切歯4本の疼痛、
舌痛、
喉の不快感、
嚥下困難、
などを引き起こす傾向があります。
診断との関係
虫歯と診断されることがあります。
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頭板状筋のトリガーポイント関連痛領域
頭板状筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●筋肉の酷使、
●長時間右か左を向いたままの姿勢、
●うつ伏せで顔を上げて読書、
●バイオリンの演奏、
●冷気にさらす、
●外傷、
など。
身体への影響
首の屈曲制限、回旋制限、
頸椎関節機能不全、
頭痛、
などを引き起こす傾向があります。
診断との関係
頸椎関節機能不全、片頭痛、痙性斜頸と診断されることがあります。
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頸板状筋のトリガーポイント関連痛領域
頸板状筋のトリガーポイントを引き起こす要因
頭板状筋と同じ要因によって引き起こされます。
身体への影響
頭痛、
眼痛、
眼の霧視、
などを引き起こす傾向があります。
診断との関係
頸椎関節機能不全、片頭痛、痙性斜頸と診断されることがあります。
トリガーポイント索引へ戻る頭半棘筋
頭半棘筋のトリガーポイント関連痛領域
頭半棘筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●筋肉の酷使、
●長時間顔を前に突き出した姿勢、
●寝転がって肘をついて手で頭を支える姿勢、
●きついネクタイやシャツの着用、
●冷気にさらす、
●頸神経障害、
●頸椎関節炎、
●外傷、
など。
身体への影響
首の屈曲制限、側屈制限、
頭痛、
大後頭神経の絞扼、
頸椎関節機能不全、
骨関節炎、
などを引き起こす傾向があります。
診断との関係
頸椎骨関節炎、片頭痛と診断されることがあります。
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頭最長筋のトリガーポイント関連痛領域
身体への影響
耳後部の痛み、
目元の痛み、
第一肋椎関節機能障害、
などに関与している可能性があります。
後頭下筋群
後頭下筋群のトリガーポイント関連痛領域
後頭下筋群=大後頭直筋、小後頭直筋、下頭斜筋、上頭斜筋で構成されます。
後頭下筋群のトリガーポイントを引き起こす要因
●筋肉の酷使、
●長時間上を向く姿勢、
●長時間顔を前に突き出した姿勢、
●長時間右か左を向いたままの姿勢、
●冷気にさらす、
●環椎後頭関節機能障害、
●環軸関節機能障害、
●外傷、
など。
身体への影響
頭痛、
首と頭のつなぎ目での屈曲制限、側屈制限、回旋制限、
環椎後頭関節機能障害、
環軸関節機能障害、
などを引き起こす傾向があります。
診断との関係
片頭痛、頭部神経痛と診断されることがあります。
トリガーポイント索引へ戻る後頭筋・前頭筋
後頭筋・前頭筋のトリガーポイント関連痛領域
後頭筋・前頭筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●筋肉の酷使、
●額に皺を寄せる癖、
●外傷、
●後頸筋群や胸鎖乳突筋のトリガーポイントによって引き起こされる、
など。
身体への影響
後頭、眼球後部の頭痛、
後頭部圧迫時の不快感、
眼痛、
額の頭痛、
眼窩上神経の絞扼、
などを引き起こす傾向があります。
診断との関係
片頭痛、頭部神経痛(大後頭神経痛)と診断されることがあります。
トリガーポイント索引へ戻る側頭筋
側頭筋のトリガーポイント関連痛領域
側頭筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●筋肉の酷使、
●噛みしめ、
●ガムの噛み過ぎ、
●爪を噛む癖、
●口を開けたままの体勢、
●不正咬合(噛み合わせが悪い)、
●頭を前に出した体勢、
●顎関節機能障害、
●冷気にさらす、
●外傷、
●僧帽筋上部や胸鎖乳突筋のトリガーポイントによって引き起こされる、
など。
身体への影響
頭痛、
上顎歯周辺の痛みや知覚過敏、
不正咬合、
額の頭痛、
顎関節の痛み、
などを引き起こす傾向があります。
診断との関係
顎関節の疾患(骨関節炎、関節内障など)、歯科疾患、頭痛と診断されることがあります。
トリガーポイント索引へ戻る咬筋
咬筋のトリガーポイント関連痛領域
咬筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●筋肉の酷使、
●噛みしめ、
●ガムの噛み過ぎ、
●爪を噛む癖、
●口を開けたままの体勢、
●不正咬合、
●頭を前に出した体勢、
●顎関節機能障害、
●外傷、
●精神的ストレス、
●僧帽筋上部や胸鎖乳突筋のトリガーポイントによって引き起こされる、
など。
身体への影響
開口制限、
上下大臼歯周辺の痛みや知覚過敏、
顎関節の痛み、
不正咬合、
上眼静脈の絞扼による眼の腫れ、
耳鳴りや深部痛、
などを引き起こす傾向があります。
診断との関係
顎関節の疾患(骨関節炎、関節内障など)、歯科疾患、頭痛、副鼻腔炎と診断されることがあります。
トリガーポイント索引へ戻る腕橈骨筋
腕橈骨筋のトリガーポイント関連痛領域
腕橈骨筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●腕橈骨筋の酷使、
●前腕を回内回外の中間の位置(手のひらが内、手の甲が外を向いた位置)にして物を持ち上げる、
●シャベルで土を掘る作業、
●フライパンを持って上下に振る、
●強すぎる握手、
など。
診断との関係
外側上顆炎、第5または第6頸神経の圧迫、狭窄性腱鞘炎(ドケルバン病)と診断されることがあります。
トリガーポイント索引へ戻る円回内筋
円回内筋トリガーポイントの関連痛領域
円回内筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●円回内筋の酷使、
●ドライバを使う、
●テニスのフォアハンド・ストロークを悪いフォームで打つ、
●前腕を内側に捻る動作、
など。
診断との関係
外側上顆炎、胸郭出口症候群、手根管症候群、手関節機能障害と診断されることがあります。
トリガーポイント索引へ戻る回外筋
回外筋トリガーポイントの関連痛領域
回外筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●回外筋の酷使、
●ドライバを使う、
●テニスのバックハンド・ストロークを悪いフォームで打つ、
●前腕を外側に捻る動作、
など。
診断との関係
外側上顆炎、第5または第6頸神経の圧迫、狭窄性腱鞘炎(ドケルバン病)と診断されることがあります。
トリガーポイント索引へ戻る大殿筋
大殿筋のトリガーポイント関連痛領域
大殿筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●筋肉の酷使、
●長時間の座位(特に財布を後ろポケットに入れている場合)、
●上り坂を歩く、
●水泳のクロールなどを長時間行う、
●外傷、
●注射の刺激、
●モートン病、
など。
身体への影響
長時間の座位での静止不能および疼痛、
睡眠困難、
上り坂歩行時の疼痛、
前かがみ時の疼痛、
股関節屈曲制限、
などを引き起こす傾向があります。
診断との関係
仙腸関節機能不全、腰椎椎間関節症候群、転子滑液包炎、尾骨痛、椎間板による神経圧迫と診断されることがあります。
トリガーポイント索引へ戻る大腿四頭筋
大腿四頭筋のトリガーポイント関連痛領域
大腿四頭筋は、大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋からなります。
図の左(前から見た図)は、大腿直筋、内側広筋、中間広筋の、
図の右(横から見た図)は、外側広筋の関連痛領域を示しています。
※中間広筋は、内側広筋と外側広筋の間、大腿直筋の裏にあります。図には描いていません。
大腿四頭筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●筋肉の酷使、
●外傷、
●伸長不足(座っている時間が長い、手術やケガをして伸ばせなかったなど)、
●大腿の上に重い物を載せて座る、
など。
身体への影響
膝の痛み、
膝関節の弱化、
患部側を下に眠れない(外側広筋のトリガーポイント)、
などを引き起こす傾向があります。
診断との関係
膝関節機能不全、転子滑液包炎、感覚異常性大腿神経痛と診断されることがあります。
トリガーポイント索引へ戻る恥骨筋
恥骨筋のトリガーポイント関連痛領域
恥骨筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●筋肉の酷使、
●長時間の短縮、
●体操競技、
●乗馬、
●長時間脚を組んで座る、
など。
身体への影響
変形性股関節症、 鼡径部の深部に鈍痛、 などを引き起こす傾向があります。
診断との関係
変形性股関節症と診断されることがあります。
トリガーポイント索引へ戻る大内転筋
大内転筋のトリガーポイント関連痛領域
鼡径部、恥骨、股関節、下腹部や骨盤内臓器が含まれます。
大内転筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●筋肉の酷使、
●長時間の短縮、
●長時間のスキー、
●長時間の乗馬、
●長時間脚を組んで座る、
●横向きに寝る、
など。
診断との関係
内転筋の腱炎・骨膜炎、鼡径ヘルニア、前立腺炎、内臓疾患や女性生殖器疾患、閉鎖神経または陰部大腿神経の絞扼と診断されることがあります。
トリガーポイント索引へ戻る長内転筋
長内転筋のトリガーポイント関連痛領域
鼡径部、股関節が含まれます。
長内転筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●筋肉の酷使、
●長時間の短縮、
●長時間の乗馬、
●長時間脚を組んで座る、
●横向きに寝る、
など。
身体への影響
鼡径部痛の主な原因となり、股関節の外転(開脚)を制限します。
診断との関係
内転筋の腱炎・骨膜炎、股関節の変形性関節症、鼡径ヘルニア、前立腺炎、閉鎖神経または陰部大腿神経の絞扼と診断されることがあります。
トリガーポイント索引へ戻る腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)
腸腰筋のトリガーポイント関連痛領域
そけい部、股関節が含まれます。
腸腰筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●過度のエクササイズ(クランチ、カールアップなど)、
●過度のランニング、
●過度のキック(サッカーなど)、
●長時間の筋肉の短縮(長時間座る、丸まった体勢で寝る、強い反り腰など)、
●脚長の左右差、
●普段ズボンの後ろポケットに財布を入れてる、
など。
身体への影響
大腿神経、陰部大腿神経を圧迫する場合があります。
診断との関係
胸腔下部、腰部、仙腸関節の機能障害、または中錘炎と診断されることがあります。
トリガーポイント索引へ戻る腹斜筋(内腹斜筋、外腹斜筋)
腹斜筋のトリガーポイント関連痛領域
鼡径部、股関節、恥骨が含まれます。
腹斜筋のトリガーポイントを引き起こす要因
●過度のエクササイズ(クランチ、カールアップなど)、
●慢性の咳、
●長時間捻る姿勢など筋肉の酷使、
●外傷、
●内臓疾患、
●情緒的ストレス、
など。
身体への影響
鼡径部に疼痛を引き起こす傾向があります。
診断との関係
消化性潰瘍、裂孔ヘルニア、虫垂炎、小腸内感染症、尿管疾患、胆嚢炎、月経疼痛、女性生殖器疾患と診断されることがあります。
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