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仙腸関節機能障害

仙腸関節とは、骨盤の後方で仙骨と寛骨(腸骨部分)が強力な靭帯によって連結した部分です。
可動域は非常に小さく、0.7~2.7mm(資料によって異なります)ほどです。
仙腸関節を直接動かす筋肉は存在しません。

仙腸関節機能障害(仙腸関節機能異常)は、仙腸関節痛や離れた部位に関連痛、筋スパズム(痙攣、筋の不随意的な異常収縮)、広範囲の関節二次性三次性の機能障害などを引き起こす可能性があります。

骨盤の構成

仙腸関節機能障害の症状

可動域制限

下肢挙上テスト(SLRテスト)で下肢の挙上制限がみられます。仙腸関節に痛みを伴うことが多いですが無痛の場合もあります。
※下肢の挙上制限はハムストリングスの短縮でも起こります。

下肢挙上テスト、SLRテスト

仙腸関節痛

仙腸関節が不安定になると仙腸関節痛を発症します。
立位や体勢を変えるときに痛みが強くなります。

関連痛

仙腸関節機能障害の関連痛と感覚異常の領域

仙腸関節機能障害は、同側の半身に一次性および二次性の関連痛や感覚異常を引き起こします。
一次性の関連痛には次の五つの領域があります。

  • 1.下腹部~鼡径部~大腿前面~膝前面~下腿前面~足背
  • 2.殿部~大腿後面~膝窩部~下腿後面~アキレス腱部~踵~足底
  • 3.殿部~大腿外側~下腿外側~足背
  • 4.腰部~背部~後頸部
  • 5.腹部~前胸部~前頸部

腰部および腹部から上行する関連痛は、筋スパズムを介して頸椎椎間関節、胸椎椎間関節、肋椎関節、胸肋関節に二次性関節機能障害を起こし、さらにこれらの関節から頭部や上肢に関連痛が出現することがあります。
関連痛と関節機能障害の発生には数週間から数年の時間差があります。
仙腸関節機能障害では、ある身体部分への関連痛が消失したあと、他の部分に痛みが出現することもあります。

他部位にスパズムと機能障害

仙腸関節機能障害は、頸部、背部、腰部、胸郭、腹壁、上肢、下肢の全筋群にスパズムを起こし、
椎間関節、肋椎関節、胸肋関節、恥骨結合、股関節、肩鎖関節、胸鎖関節、手関節、足関節、足根骨の関節など、全身の関節に二次性三次性の機能障害を引き起こす可能性があります。
仙腸関節を直接動かす筋はありませんが、仙骨や腸骨に付着する筋に最初のスパズムが発生すると考えられています。


自分で仙腸関節可動性を検査する方法

自分で仙腸関節可動性を検査するには、
まず、下図のように椅子に座って背筋を伸ばした状態で、左右の上後腸骨棘とその間の仙骨に記しを付けます。
ここから、上体を図のように前に曲げていきます。
この前屈の動作を、後ろからスマホなどで動画撮影し撮影した動画で判定します。
左右の点に対し中央の点が上か下に動いていれば仙腸関節可動制限はありません。
中央の点が下に動く場合は腰椎椎間関節が動いていない可能性がありますが、仙腸関節のテストとしては正常です。

中央の点と右か左の点が同じ位置になる場合、
そちら側の仙腸関節に可動制限があります。

自分で仙腸関節を可動検査する方法

上後腸骨棘の見つけ方

上後腸骨棘(PSIS)は、腸骨稜の後端で浅いところにあります。
目視では、小さなくぼみとして識別できます。
触診では、骨盤後面のやや出ている部位で、腸骨稜に指を当て骨をなぞっていった終端の部位として認識できます。

仙腸関節、上後腸骨棘の見つけ方

仙腸関節機能障害の原因

仙腸関節変位(関節面のズレ)

元々可動性が小さい(0.7~2.7mmほど)仙腸関節に、転倒、衝突、長時間の圧などの外力が加わると、仙腸関節の遊びの範囲を越え、関節面がズレた位置で固定されることがあります。

仙腸関節変位の原因

  • 何かの拍子に身体を捻った、転んだ
  • 普段しない姿勢や動作をしていた
  • 長時間間座っていた
  • 引っ越しの荷造り、大掃除など普段やらないことをした
  • 草むしりなどでしゃがんでいた
  • 足を怪我して松葉つえをついていた
  • カバンの持ち方がいつも同じ
  • テレビを見るとき身体を捻っている
  • パソコンが正面に置いてない
  • 横向きに寝る
  • 脚を組んで座る
  • 長い階段を下りる
  • 横座り
  • 妊娠・出産
など。

軟部組織の変化

長期臥床患者や骨盤ベルトの常用など、長期間関節に適度な負荷がかからない状態が続くと靭帯などの関節軟部組織の伸縮性が減少し、可動制限を引き起こします。
また、仙腸関節は、胸腰筋膜を介し広背筋や大殿筋に補強されます。この筋力が低下したり慢性的に力がかかり靭帯が弱化すると、関節の可動性が増大し不安定になります。

仙腸関節の靭帯が弱化または硬化する原因

上記の仙腸関節変位の原因に加え
  • 骨盤ベルトの長期使用
  • 骨盤をきつく締める装具
  • いつもタイトなパンツを穿いている
  • 過剰なストレッチ
  • 過剰な骨盤矯正
など。

仙腸関節機能障害の対策

仙腸関節が不安定な場合

状態に応じて、
骨盤ベルトを装着し仙腸関節を安定させ、靭帯の回復を待ちます。
仙腸関節は、胸腰筋膜を介し広背筋や大殿筋で補強されるため、広背筋と大殿筋の筋力強化を行います。

※骨盤ベルトはいつまでも装着していると靭帯が強化されません。

仙腸関節変位、可動制限

通常は、関節や周辺の筋、筋膜の矯正が必要です。

さほどひどく無く恥骨に痛みが無ければ、歩幅を広めに歩いたり、ラジオ体操など軽い運動を行うことで改善される可能性もあります。